生活保護に関する偏見や差別を助長しない報道と議論を求める共同声明~「生活保護バッシング」注意報を発出します~

お知らせ

2025-05-14

今年3~4月、講談社が運営するウェブマガジン「FORZA STYLE」において、生活保護バッシングや外国人ヘイトを煽る記事が次々と掲載されるという問題が起こりました。 特に4月8日と9日にアップされた下記の2つの記事は、Yahoo!ニュース等にも転載され、一時期、Yahoo!ニュースのコメント欄が生活保護利用者や外国人に対する差別的なコメントで埋め尽くされるという状況が発生しました。

「働くのダルいし生活保護」労働なしで生きる権利を求める人々。関係者が語る「真面目に働いている人がバカをみる国」ニッポン【専門家解説】
「誰が申請を?」来日間もない外国人の生活保護に疑問を抱く貧困母子家庭。逆転する「貧困」と「生活保護」の暮らしぶりに今思うこと【識者解説】

この2本の記事は、いずれも「関係者」の話を聞いた「専門家」「識者」による解説をライターがまとめたという体裁になっていましたが、情報源となっている「関係者」とは「義姉が元ケースワーカーだったと話す女性」や「外国人受給者がアパートのお隣さんだと話す女性」でしかなく、問題を解説する「専門家」「識者」とは思えない「危機管理コンサルタント」でした。 裏取りもしていない噂話レベルの情報をもとに特定のグループの人たちへのマイナスイメージを植え付けるという手法は、ヘイトスピーチでよく見られる悪質な印象操作です。

講談社という大手出版社が運営するサイトにおいて、生活保護利用者や外国人への差別を扇動する記事が掲載されたことの衝撃は大きく、多くの人が批判の声をあげました。 Yahoo!ニュースは4月11日までに上記の2つの記事を削除し、講談社「FORZASTYLE」も12日までに上記を含む生活保護関連の記事を全て削除しました。 両社とも削除の理由は明らかにしていませんが、批判を踏まえた対応であったと推察されます。

言うまでもなく、生活保護利用者への偏見・差別を煽る報道は、生活に困窮する人々を制度から遠ざけ、制度を利用している人々の尊厳を傷つけます。 過去には、社会保障費の削減を主張する政治家が自らの政策実現のために制度利用者に対するバッシングを人為的に引き起こしたり、悪用したりする例も散見されます。 2012年には、一部の国会議員が主導する形でテレビや週刊誌で生活保護バッシングが過熱。 バッシングを通して広がった生活保護の制度や利用者に対するマイナスイメージが、過去最大の生活保護基準引き下げ(2013年~2015年)という政策決定への呼び水となりました。

過去最大の生活保護基準引き下げに対しては、全国各地の生活保護利用者が原告となって減額の取り消し等を求める「いのちのとりで裁判」が提起されています。 「いのちのとりで裁判」では、これまで言い渡された41の判決のうち、原告が26勝15敗(地裁19勝11敗、高裁7勝4敗)と大きく勝ち越しており、5月27日には大阪訴訟と愛知訴訟に関する最高裁の口頭弁論期日が設定されました。 今夏には、最高裁の統一判断が示される見通しであり、一連の裁判はクライマックスに差し掛かっています。

今後、「いのちのとりで裁判」の最高裁決着が近づくにつれ、生活保護に関する報道やSNS発信が増加することが予想されますが、生活保護への社会的注目が高まることに便乗して、生活保護バッシングや外国人ヘイトを扇動する者が現れることが懸念されます。 また、今年6月に予定されている東京都都議会議員選挙や、7月に実施されると見られる参議院議員選挙において、選挙活動という形で生活保護バッシングや外国人の生活保護利用をめぐるヘイトが拡散されてしまう危険性もあります。 司法や政治における上記の状況から、私たちは特に今年の春から夏にかけての時期、生活保護に関連するバッシングやヘイトに注意することを呼びかけます。 全てのメディア関係者に対しては「生活保護に関する偏見や差別を助長する報道をおこなわない」という基本姿勢を明確にした上で、正確な情報に基づく冷静な報道をおこなうことを求めます。 また、プラットフォーム事業者に対しては、偏見・差別を煽る誤情報や真偽が不確かな情報の拡散を防ぐための措置を採ることを求めます。

生活保護制度をめぐる議論が、誤った情報や真偽が不確かな情報によって左右されたり、差別を煽る印象操作によって誘導されたりすることはあってはなりません。 事実に基づいて冷静に議論がおこなわれる環境をつくるため、SNS利用者を含むすべての関係者にご協力をお願いいたします。


いのちのとりで裁判全国アクション
生活保護基準引下げにNO!全国争訟ネット
生活保護問題対策全国会議
一般社団法人つくろい東京ファンド
全国生活保護裁判連絡会
全国生活と健康を守る会連合会(全生連)
きょうされん
労働者福祉中央協議会(中央労福協)
障害者労働組合
全国クレサラ・生活再建問題対策協議会
NPO法人ささしまサポートセンター
全国クレサラ・生活再建問題被害者連絡協議会
一般社団法人 人権精神ネット
日本自治体労働組合総連合(自治労連)
北関東医療相談会
生活保障支援ボランティアの会
ビッグイシュー名古屋ネット
NPO法人さんきゅうハウス
「生活保護費大幅削減反対!三多摩アクション」
三多摩合同労働組合ゆにおん同愛会
府中緊急派遣村
チマ・チョゴリ友の会
月末食堂委員会
狛江派遣村
コロナ災害対策自治体議員の会
生活保護制度を良くする会(北海道)
いのちのとりで裁判青森弁護団
いのちのとりで裁判あおもりアクション
生存権裁判を支援する長野県の会
生活保護基準引下げ違憲訴訟群馬弁護団
人権を主張するいしかわの会
生活保護基準引下げ違憲訴訟富山弁護団
反-貧困ネットワークとやま
生活保護基準引下反対訴訟千葉県弁護団
生活保護基準引下げ反対埼玉連絡会
反貧困ネットワーク埼玉
生存権にかかわる裁判を支援する静岡の会
西濃生活と健康を守る会
生存権アクションぎふ
有限会社おとくに福祉研究所
生活保護基準引き下げ反対愛知連絡会
きょうと福祉倶楽部
京都・新生存権裁判を支援する会
生活保護基準引下げ違憲大阪訴訟弁護団
引下げアカン!大阪の会
大阪クレサラ・貧困被害をなくす会(大阪いちょうの会)
生存権裁判を支援するわかやまの会
奈良県の生活保護行政をよくする会
和歌山生存権裁判弁護団
いのちのとりで裁判奈良弁護団
兵庫県生存権裁判を支援する会
広島生活保護裁判を支援する会
人間らしく生きたい!人間裁判ささえる岡山の会
いのちのとりで裁判愛媛アクション
いかんよ貧困・福岡の会
生活保護基準引下げ違憲処分取消し請求福岡訴訟弁護団」
北九州市社会保障推進協議会
いのちのとりで裁判沖縄弁護団
北陸生活保護支援ネットワーク石川
近畿生活保護支援法律家ネットワーク
(順不同 計60団体)